2017年12月29日
原油価格上昇とサウジリスク
記事を書いた人:岡ちゃんマン
ここ最近、原油価格が上昇しています。
ここ1年のレンジを抜けて、一昨年の高値に近づこうとしています。
原油を取り巻く状況を整理してみたいと思います。
◎2014年の原油価格下落
2014年に100ドル前後あったWTI原油価格ですが、大きく下落しました。
背景には米国のシェールオイル採掘がはじまったことがあります。
シェールオイルは、通常の原油採掘よりも技術とコストがかかります。
そこで、自分たちの利権を守るために、OPEC(中東産油国)vs米国シェールオイルが始まりました。
中東産油国はコストが安いことから、増産をすることで価格安競争に持ち込みました。
原油価格の下落とともに、米国のシェールオイルの採掘量も減ってきました。
※リグカウント:原油採掘機の数
2016年に入ると、チャイナショックにより原油の需要が減ることで、さらに原油価格は下落しました。
チャイナショックは、米国シェールオイルに大打撃を与えましたが、中東産油国にも大打撃でした。
米国は、何とか技術の向上でコスト削減に成功することで、40ドル台でも利益が出るようになってきました。
逆に中東産油国は原油価格が安くなりすぎたことで、自分の首を絞める結果になってしまいました。
◎2016年~のレンジ相場
原油価格は最安で30ドルまで下落しました。
体力のなくなってきた中東産油国は、価格安競争をやめて減産政策に切り替えました。
ただ、どれだけの国が減産を守るのか⁉抜け駆けする国はいないのか⁉
また、制裁で原油の輸出が禁じられていたイランは、制裁解除になったばかりなのに、どこまで輸出を許すのか⁉
上記のような駆け引きをしながら、少しづつ産油量を減産していきました。
産油量が減れば、価格が上昇する。
価格が上昇すれば、米国シェールオイルが増産する。
シェールオイルが増産すれば、原油価格が下落する。
この繰り返しで、レンジ相場になっていました。
◎最近の原油価格の上昇
理由は中東サウジアラビアとイランにあります。
第1にサウジアラビアとイランの関係悪化があるのではないかと思います。
イエメンからサウジアラビアのリヤド空港にミサイルが撃ち込まれたことで、陸海空の交通を遮断したことが原因の1つ。
第2に11月末のOPEC総会での減産延長が合意出来そうなことと、米国シェールオイル(ベイカーヒューズ社リグカウント)が頭打ちしてきたこと。
第3にサウジアラビアで権力闘争・政治不安が悪化していること。
サウジアラビアでは、次の国王(皇太子)の権力闘争で、多くの王子や富豪が逮捕(拘束)されています。
逮捕(拘束)の理由は汚職・腐敗政治の摘発とのことですが、独裁国家で汚職といっても何十年と続いていることですし、全員がかかわっていることなのに、、、
その他にも、薬物や原油収入の勝手な使い込みなども理由に上がっているようです。
また、王子の乗ったヘリが墜落(撃墜)したとの情報もあります。
このことが、新たな地政学リスクとして受け止められ、原油価格の上昇と同時に、金(gold)価格の上昇につながっています。
サウジアラビアの王子や富豪が拘束されたことで、口座も凍結されているようです。
サウジアラビアは、大量のオイルマネーで多数の国や企業に投資しています。
今後、サウジアラビアの権力闘争が悪化するようであれば、オイルマネーの投資先に影響が出てくる可能性もあるのではないかと思います。