2018年11月21日
イタリアvs欧州委員会、予算案を巡る本音を解説!
記事を書いた人:岡ちゃんマン
目次
イタリアの予算案について、欧州委員会が意見書・報告書を公表する予定
欧州委員会のイタリアに対する対応を、イタリアだけでなく、多くのEU加盟国が注目しています。
イタリアに対する、対応を間違ってしまうと、EU崩壊・欧州金融危機の再来となってしまいます。
絶妙な判断を迫られています。
イタリアが今回の予算案を見直さなければ、欧州委員会が制裁を課すとのこと。
制裁金も痛手だろうと思いますが、本当の意味で怖いのは格付け会社による格付けの見直しです。
ジャンク債扱いになれば、銀行や保険会社や年金などは無条件でイタリア国債を手放さなければいけません。
格付けに関しては以前の記事をご覧ください
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ムーディーズ格付け発表、イタリアは格下げ! ~教えてFX,格付けとは解説~
イタリア債がジャンク債扱いになれば、ギリシャショックの再来!
ギリシャショックで済めば可愛い方だと思います。 ギリシャの経済規模はイタリアの約1/10程度です。
イタリアショックが起きれば、ギリシャショックの数倍の規模になる可能生を秘めています。
そうなると、今度ばかりはEUの崩壊は免れないと思われます。 EU崩壊で済めばいいですが、リーマンショック級の世界恐慌の火種になるかもしれません。
なので、欧州委員会はイタリアの財政赤字を拡大させるわけにはいきません。 何とか財政赤字を縮小させるためにも、緊縮財政・財政均衡達成年(財政赤字ゼロ・財政黒字)を義務付けるようにしています。 イタリアの場合は、2019年度は対GSP比0.8%まで赤字削減が義務でした。
EUのルールで財政赤字3.0%以内というルールは確かにあります。 ただし欧州委員会は、ギリシャショックの二の舞を避けるため、一旦財政赤字をゼロにとしています。
それに対し、現イタリア政権は、「緊縮財政・財政均衡達成年(財政赤字ゼロ・財政黒字)を義務」というのは前政権が決めたことで、現政権はそんな約束はしていないといっています。
それで、対GDP比2.4%という予算案を組んでいます。 欧州委員会の0.8%とイタリアの2.4%、ここで駆け引きをしている状況です。
イタリアの予算案に対して、制裁を課さずに認めてしまった場合、EU加盟国の中から非難が続出してくると思います。
ギリシャは、ギリシャショック後に欧州委員会の緊縮財政を受け入れ、苦しい期間を我慢し、やっと財政赤字を減らしたところです。
また、その他の国も「緊縮財政・財政均衡達成年(財政赤字ゼロ・財政黒字)を義務」を受け入れ、頑張っているところです。 そんな中、イタリアだけに甘い対応を取れば、当然のごとく批判にさらされると思います。
イタリアに厳しくして反発してもダメ、財政赤字を拡大させて格下げなんてことはもっとダメ、甘い顔してもダメ、難しいところだと思います。
イタリアの思惑
イタリアは今回の財政赤字は、景気回復のための財政支出拡大だといっています。
また、EUのルールでは対GDP比3.0%以内と決められており、今回の予算案は対GDP比2.4%なのでルールにのっとっていると主張。
表向きは、自国の景気回復が理由です!
ただ、本音は来年の欧州選挙のための布石です!
来年は、欧州議会選挙が予定されています。 また、欧州委員会の要人選挙も多数予定されています。
その中でイタリアは、正確にはサルビーニ副首相は、欧州議会で極右政党の躍進を狙っています。
また、欧州委員長の座も狙っています。
現在はメルケル独首相を中心とした親EU派の政党が多数派を占めています。
ただ、メルケル独首相はドイツの地元議会選挙で敗れ、支持率も下がってきています。 また、メルケル独首相は年内で所属党党首を辞めると宣言。 独首相の座も任期終了とともにやめると宣言しています。 欧州議会の中で支持率が下がってきたとはいえ、まだまだメルケル独首相に代われるほどの人物はいないと思います。 マクロン仏大統領も頑張ってはいますが、経験も支持率も足りません。
サルビーニ伊副首相は、ここがチャンスとばかりに欧州議会で反EU、極右政党を躍進させようとしています。
ここがチャンスと思っているのは、サルビーニ伊副首相だけではありません。 2016年にマクロン仏大統領と大統領の座を争った、ルペン候補もチャンスだと思い、着実に支持率を伸ばしています。 フランス内での支持率はマクロン大統領を超えています。 その他には、トランプ大統領の元選挙対策参謀のスティーブ・バノン氏も拠点を欧州に移し、欧州各国の極右政党トップを繋いでいこうとしています。
そのため、イタリアは今回の予算案で駄々をこねて、欧州委員会を困らせ、極右政党に支持が集まるようにしていると思われます。 なので、本当の意味での財政赤字拡大や金融危機につながるような格下げ(ジャンク債)になる前に、落としどころを見つけると思われます。
欧州議会の議席数以外に、欧州委員長の座も狙っています。
欧州委員長は、EUの役職の中でも特に影響力・権限が強い役職です。
来年はドラギECB(欧州中央銀行)総裁の任期満了の年です。 以前から、後任にはドイツ中銀総裁のバイトマン氏が有力候補とされていました。 しかし、ECB総裁の席を諦めてでも欧州委員長の座にドイツ人を就任させようと、メルケル独首相は推薦しています。 それほど、欧州委員長の影響力・権限は大きいのです。
その欧州委員長の座、サルビーニ伊副首相が狙っているとの報道がありました。 そんな事になれば、極右政党が欧州議会で躍進どころの騒ぎでは済まなくなります。 そのためにも、今回の予算案で混乱させようとしています。
これがイタリア(サルビーニ伊副首相)の本心だと思います。