2022年2月6日
ユーロ買いは継続か? 米物価は上昇しているのか? 「2月7日週の注目点とイベントスケジュール」
記事を書いた人:岡ちゃんマン
先週はハト派筆頭だと思われたラガルドECB総裁のタカ派変貌でユーロは急騰しています。
英国では予想通りの0.25%利上げでしたが、実情は9名中4名が0.5%の利上げを支持するという0.5%利上げと紙一重の利上げでした。
このことでポンドは一時大きく買われましたが、その後のベイリーBOE総裁の記者会見で火消し発言が出てきたことでポンドは政策発表前の水準に戻しています。
ただ、英国や欧州の金融政策発表を受けて世界的に金利が上昇、金利が上昇したことで株価の重しとなっています。
米国は週末の雇用統計でサプライズ発表、雇用状況は前回・前々回の雇用者数が上方修正されるなど、人手不足が確認されました。
平均時給も予想を大きく上回り、人件費コストの上振れも確認されています。
今週は先週の流れを引き継いでユーロ買いが進むのか、ドル買いは再開するのか注目です。
また、週末発表された平均時給の上振れは物価上昇に繋がる可能性が高く、今週は米国の物価指標も発表されるのでどこまで物価が上昇しているのか注目です。
目次
◎今週の注目点
1)ユーロの上昇
先週のECB理事会記者会見でラガルドECB総裁がタカ派に変貌したことで、イッキにECBの年内利上げ観測が高まっています。
引き締め観測から欧州各国の金利は上昇し、ユーロは上昇しています。
今週も引き締め観測からユーロが買われるか注目です。
ECB要人からAPP(資産購入プログラム)縮小の前倒しや、年内利上げに関する発言が出てくるようであればユーロ買いが進むのではないかと注目しています。
ただ、ウクライナ情勢や英国との北アイルランド議定書を巡る協議など地政学リスクがユーロの重しとなりそうです。
ウクライナ情勢については以下リスク要因にまとめます。
北アイルランド議定書は英国と欧州の離脱に関する協議の1つで、北アイルランド(英国領)とアイルランド(EU加盟国)の国境や関税などを取り決めたものですが、未だに妥協点が見いだせずに協議が続いています。
協議の期限が2月末となっており、北アイルランド議定書が白紙撤回される展開となれば経済的な混乱だけでなく、アイルランド島の宗教的な混乱に繋がるのではないかと注目しています。
引き締め観測のユーロ買いか、それともリスクによるユーロ売りか、どちらが強く意識されるのか注目です。
2)米金利・米ドル・米株
先週末に発表された雇用統計はかなりのサプライズでした。
ADP雇用統計が予想以上に弱かったことと、NFP雇用統計の後にバイデン大統領の会見が設定されていたことで、NFP雇用統計もADP雇用統計同様に悪い数字が出てくるとの予想が多い状況でした。
ただ、結果は予想を大きく上回る46.7万人(予想15.0万人)となり、前回12月と前々回11月の雇用者数も併せて70万人上方修正され、強い雇用が示されました。
また、同時に発表された平均時給は前年比5.7%(予想5.2%)と予想を上回り、前回発表された4.7%から大きく上昇しています。
平均時給が大きく上昇したことで米国のインフレがまだまだ上昇するとの思惑に繋がり、FRBの引き締め加速に繋がるとの思惑から米金利は大きく上昇しています。
今週は注目の物価指標、CPI(消費者物価指数)の発表があります。
平均時給が予想を大きく上回り、原油価格などエネルギー価格が上昇していることから、物価は大きく上昇しているのではないかと注目が集まっています。
物価が予想以上に上昇しているようであれば、FRBの引き締め加速に繋がり金利は上昇、ドル買いが進む可能性があるので注目です。
また、パウエルFRB議長のタカ発言に対して、ブレイナードFRB次期副議長や地区連銀総裁から火消し発言が続いています。
今週も要人発言から火消し発言が出てきて金利が低下するのか、引き締めに前向きな発言が出てきて金利が上昇するのか注目です。
また、利上げ期待が進み金利が上昇するようであれば、株価下落に繋がる可能性があります。
株価下落はリスクオフに繋がるので、引き締め期待と株価、金利には要注意です。
3)ポンド
先週、英中銀は2会合連続の利上げを発表。
9人中4人が0.5%利上げに票を投じるなど、タカ派姿勢を強調しています。
0.5%利上げに票を投じたのはラムズデンBOE副総裁・ソーンダースBOE外部理事・ハスケルBOE外部理事・マンBOE外部理事の4名です。
英中銀は年内3∼4回の利上げが織り込まれつつあります。
さらに追加利上げの可能性が出てくるのか、ポンド買いが続くのか、要人発言や英GDPに注目です。
4)円安
先週、欧州が引き締めに方針転換したことで主要中銀で緩和方針を継続しているのは日本とスイスだけになってしまいました。
スイスはウクライナ情勢など地政学リスクに地理的に近いことからスイスフランが買われやすい状況。
円だけが売られやすい状況となっています。
対ドル・クロス円で円安が進行するのか注目です。
また、世界的に金利が上昇している状況で日本の金利も上昇し、日銀がYCC(イールドカーブ・コントロール)のターゲット上限としている0.2%に近づいています。
0.2%に達したときに日銀が指値オペをするのか、緩和を継続するようであれば円安が大きく進むのではないかと注目です。
5)リスク要因
東欧・中東リスク
中東ではアラブ首長国連邦(UAE)でドローン攻撃が続いており、地政学リスクが高くなってきています。
また、イスラム国の指導者を襲撃したと米国が発表するなど中東リスクが高くなっていて、中東リスクの高まりは原油価格の上昇要因となっています。
東欧はウクライナに対するロシア進攻が進んでいます。
ロシアと中国は近づき、西側諸国はロシアと中国を批判、対立は激しくなってきています。
ロシアは欧州に対しガス供給を停止する可能性があり、欧州のガス価格が上昇しています。
米国や欧州はロシア以外からのガス供給策を調整している状況です。
米国はロシアをSWIFT(国際送金のネットワークシステム)から外す制裁を検討しているようです。
SWIFTから外されると国際送金・決済がほとんどできなくなり、資源の輸出が難しくなります。
また、米軍をウクライナに派遣するなど、緊迫した状況となっています。
欧州では今週、ドイツとフランスがウクライナとロシアを訪問予定、英国もロシアに対して経済制裁を準備、NATOも軍事強化を進めています。
今週もウクライナを巡るヘッドラインに要注目です。
エネルギー価格
ウクライナ情勢で天然ガスは高騰、中東リスクとOPECプラス閣僚級会合で増産計画の維持が発表され、産油国は増産計画を順守できていない(産油量が足りていない)状況から原油価格が上昇しています。
世界的に物価上昇が問題となりスタグフレーションも懸念される状況で、物価上昇の大きな要因となっているエネルギー価格の上昇に注目です。
天然ガス価格や原油価格がさらに上昇するようであれば物価高に繋がり、スタグフレーションの可能性が高まり、リスクオフに繋がる可能性があります。
エネルギー価格の上昇はリスク要因だと考えて、注目しておきたいと思います。
株価下落
世界的に引き締め観測が強くなり金利が上昇。
金利の上昇は株価の重しとなり、株価下落に繋がる可能性が高いです。
先週も欧州と英国の引き締め観測で欧州や英国の株価は下落しました。
今週も英米欧で引き締め観測が進み、金利が上昇したときは株価下落に繋がる可能性があるので注目です。
◎今週のイベントスケジュール
2月7日(月曜日)
10:45 CNY 財新サービス業PMI
2月8日(火曜日)
00:45 EUR ラガルドECB総裁発言
05:00 USD 米消費者信用残高
11:15 NZD オアRBNZ総裁発言
22:30 USD 米貿易収支
22:30 CAD カナダ貿易収支
2月9日(水曜日)
02:00 EUR ビルロワ・フランス中銀総裁発言
03:00 USD 米3年債入札
08:30 AUD 豪Westpac消費者信頼感指数
21:00 MXN メキシコCPI(消費者物価指数)
22:10 GBP ピルBOE主席エコノミスト発言
2月10日(木曜日)
00:30 USD 原油在庫量
00:30 USD ボウマンFRB理事発言
02:00 USD メスター・クリーブランド連銀総裁発言(22年投票権)
02:00 CAD マックレムBOC総裁発言
03:00 USD 米10年債入札
21:00 EUR デギントスECB副総裁発言
21:30 EUR ビルロワ・フランス中銀総裁発言
22:15 EUR レーンECB専務理事兼主席エコノミスト発言
22:30 USD 米CPI(消費者物価指数)・失業保険申請件数
2月11日(金曜日)
東京市場休場(建国記念日)
03:00 USD 米30年債入札
05:15 GBP ベイリーBOE総裁発言
07:30 AUD ロウRBA総裁発言
16:00 GBP 英四半期GDP(10~12月期)(速報値)
17:05 EUR エルダーソンECB専務理事発言
2月12日(土曜日)
00:00 USD ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)
03:00 USD ベイカーヒューズ社リグカウント
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